第三章 構え&運足

玄制流には独特の構えが存在する。
競技では使えないが実戦では、非常に効果を発揮するものだ。
この構えより体軸を変化させ、体を移動することにより、体格や力を超えた力を出すことができるのだ。


その1 帆立て構え
玄制流ならではの構えがこの「帆立て構え」(写真3・4)だ。実戦に即したこの構えで大切なことは、前手の使い方だ。前手で相手の攻撃を上下左右に捌くと同時に、間合いをつめて攻撃に転じる(写真5・6・7)。したがって、「手首は床に対し、垂直になればなるほど良い」と土佐邦彦氏は言う。

滑らかに上下左右に相手の攻撃を捌き、体制を崩す。それから貫手を放つ。


その2 貫手構え

“祝嶺のバッサイ”は全てこの「貫手構え」だ(写真8)。両手は相手の目に照準をあわせ、貫手を放つ。この手は防御時、掌底を用い、鞭のごとく柔らかく動き、相手の攻撃を叩き落とす。これは空手というよりも中国拳法のような動きだ(写真9・10)。
相手の突き・蹴りを前に構えた手で掌底を用い、押え受け・落し受けで受けると同時に、逆の貫手で相手の目、または喉を突き刺して、攻撃する。
この構えのポイントは後屈立ちになる直前まで、猫足立ちだということだ。爪先をするように移動し、構えたときは後屈立ちとなる(写真11−1〜2)
それは、なぜか? 答えは比較的攻撃のされやすい、移動時及び体を入れ替える状態でも、前蹴りで反撃ができるからだ。
ちなみに体の入れ替えは中心線上でやる。

◎間合いについて
1 相応間合い

相応間合いとは、相手に対して最小限の間合いであり、一進一退の動作によって、有効な攻撃や防御できる間合い
2 誘導間合い

誘導間合いとは、相手に対して中間位の間合いであり、相応間合いより半歩退いて、その半歩を誘導に利用して術技を施すことのできる間合い。
3 限度間合い

限度間合いとは、相手に対して最大限の間合いであり、その一歩を誘導に利用して術技を施すことのできる間合い。
これら1〜3の間合いを複合的に組み合わせ、利用することによって、間合いを操作し、己の有利な状態をつくりだすことができる。